Music City プロジェクト
概要
“音楽都市”を標榜するコンサルティングファーム「Sound Diplomacy」と協働し、音楽がもつ文化的・経済的な可能性を探ることで都市の活性化を目指すプロジェクト。都市環境の改善や新たなカルチャーの創出を図るため、一般市民だけでなく、行政や企業とも連携しながらコミュニティを形成し、議論や勉強会を通じて新しい都市のあり方を模索しています。
成り立ち
若林が最初にSound Diplomacyと出会ったのは、2018年にアメリカ・オースティンで開催されたSXSWでのこと。彼らの“音楽をテーマにした行政コンサルティング”というユニークな活動に興味をもった若林はその後、ロンドンでの〈都市と文化の未来〉ツアーや森ビルのカルチャーランドスケープに関するリサーチなどを通じて関係を深めていきました。
本格的なプロジェクトのスタートは、シェイン・シャピロさんが2023年に出版した書籍『THIS MUST BE THE PLACE: How Music Can Make Your City Better』がきっかけです。世界各地の都市が音楽を通じてどのように活性化され、都市環境が変革していくかを多角的に分析した本作について、翻訳書の制作依頼を受けた若林は、単に翻訳・出版するだけではなく、そこから音楽都市をテーマにコミュニティを形成し、行政などを巻き込みながら実践的なアクションへとつなげることを目指しました。
こうした取り組みを進めるにあたり、最初に声をかけたのがナイトタイムエコノミー推進協議会の齋藤貴弘さんです。齋藤さんは、若林が『WIRED』日本版の編集長を務めていた2016年開催のイベント「Sound & City」に登壇いただいたことをきっかけに、その後もさまざまなプロジェクトを共に歩んできた心強い存在です。
プロジェクトを支援してくれる企業を探していた若林は、齋藤さんの紹介で東邦レオの吉川稔さんと出会います。東邦レオは、ロサンゼルス発のインターネットラジオ「dublab」の日本ブランチ「dublab.jp」と協働し、国内で音楽やアートに関するイベントを手がけるなど、カルチャー分野で豊富な経験をもつ企業です。2022年からは、環境と音楽の新しい関係性を探り、社会への実装を目指すプロジェクト「TOKYO KANKYO」をスタートさせるなど、音楽を通じた都市文化の発展にも積極的に取り組んでいます。こうした取り組みの中心人物である吉川さんの協力により、Music City プロジェクトは単なる議論の場にとどまらず、都市を舞台にしたラボとして一歩を踏み出すことになりました。
2024年9月には、シャピロさんの来日に合わせてキックオフイベント「Music City Conference Vol.00」を開催。DAY1は地方自治体の担当者を集めて議論を行い、DAY2は一般公開のトークセッションを実施。シャピロさんだけでなく、齋藤さん、同じくナイトタイムエコノミー推進協議会の伊藤佳菜さん、そしてCANTEENの遠山啓一さんといった都市文化に造詣の深い専門家が登壇し、意見を交わしました。
今後の展開としては、書籍『THIS MUST BE THE PLACE』の翻訳書の出版を2025年春に予定しており、それに合わせてSound Diplomacyのカンファレンスの開催も検討中です。また、音楽と都市の関係性をさらに追求するため、京都や福岡といった各都市と連携も深めていきたいと考えています。