プライバシー・パラドックス:データ監視社会と 「わたし」の再発明

プライバシー・パラドックス:データ監視社会と 「わたし」の再発明

概要

プライバシー保護の重要性を認めつつも、巨大テックプラットフォームにせっせとデータを供給し続けるわたしたちが迎え入れようとしている未来は、利便性のユートピアか、それとも全人監視のディストピアか。「プライバシー・パラドックス」といういま最も困難な問題を、 ベルリン在住の碩学・メディア美学者の武邑光裕さんが、 欧州の歴史を縦横にたどりながら解き明かした書籍『プライバシー・パラドックス:データ監視社会と「わたし」の再発明』。デジタル庁の新設など国家をあげてDXに邁進し始めたタイミングで日本に向けたメッセージとして刊行しました。刊行記念のオンラインイベントには100名以上が参加し、その後、武邑塾を共同開催するなど武邑さんとのコラボレーションのきっかけとなりました。


成り立ち

この書籍は、2018年に武邑光裕さんと若林が開催したイベント「GDPR Master Class Vol.01」に続くものとしてあります。武邑先生は2020年当時、法律と法社会学の専門誌『時の法令』(朝陽会刊)で「ベルリン発!デジタルプライバシー考」という連載をされていました。その連載をまとめたのが、『プライバシー・パラドックス:データ監視社会と「わたし」の再発明』です。

本書はGDPR 以後の欧州の状況を綴ったものですが、「プライバシー」という考え方の起源を、ワイマール期のドイツのヌーディストたちの運動に見いだすなど、武邑さんならではの文化史的なユニークな視点から掘り下げているのが特徴で、いわゆるテック本からはみ出していく視点がとりわけ魅力です。サイバーパンク的想像力は失効し中世的想像力に置き換わったとの時代分析のなかから、グレタ・トゥーンベリを北欧からやってきた「巫女」だと読み解くなど、唸るような卓見に溢れています。

ちなみに本書の縦長の造本は、かつて国書刊行会から刊行された「バベルの図書館」というシリーズにあやかったものです。